学科旅行4日目は三菱電機です.阪神・淡路大震災の影響を受けたため,施設はとても綺麗でした.
三菱電機の研究施設は,ここ兵庫県尼崎市の先端技術総合研究所の他に,神奈川県鎌倉市に情報技術研究所とデザイン研究所があります.航空宇宙部門としては,鎌倉で実際の衛星の研究・運用を行なっています.
ここでは,いろいろなセクションを断片的に見学したので,それらについて,備忘録的に記録します.
機能検証モデルを見学.200kgレベルの衛星を想定していました.
モデル機を圧縮空気で浮かし(非接触で浮上支持),姿勢制御の試験ができる仕組みになっています.
リアクションホイール(RW)からコントロール・モーメント・ジャイロ(CMG)の研究開発を行なっていました.CMGはRWと違って,ジャイロトルクを伝達します.
RWの10~100倍の大トルクを発生可能で,2000年代から中型機徐々に搭載機が出てき始めました.
これによって俊敏な姿勢制御が可能となり,従来の極軌道地球観測衛星では,日本上空を通過する際1枚(1箇所)しか撮影できなかったところを10枚撮影可能になるよう開発を進めています.
TMT(Thirty Meter Telescope)で使用される分割鏡交換ロボットの試作機を見学しました.
反射望遠鏡の鏡は,表面金属の酸化で反射率低下し,2年に1回の交換が性能を維持するために必要です.
2週間で1回10枚10時間で交換し,望遠鏡を傷めないよう最新の技術が取り込まれていました.
例えば,望遠鏡の鏡なので,鏡は斜めを向いており,斜めの支持台に差し込まれています.それをそのまま引き抜くと,支持台から抜けた瞬間に支持台への(鏡重量の斜面方向成分)負荷がなくなり,変形が戻ります.そうすると,特に引き抜く直前,斜面水平成分負荷が鏡総入部先端に集中します.そこで,鏡に働いている負荷を計測し,ロボットアームにフィードバックをかけることにより,スムーズな鏡交換を実現しています.また,差込時にも同様な制御を行い,鏡,支持台へ与える負荷を最小化していました.
主に自動車に用いられるパワーステアリングを開発していました.ハンドルとタイヤの間にこれを挟むことによって,操舵が楽に,スムーズになり,またタイヤ側からの衝撃などが手元まで伝わらなくなります.
実際にシュミレータでパワーステアリングありなしで運転してきました.違いは歴然でした.
また,三菱電機では,このパワーステアリングを自動運転に応用するための研究も行っています.これを車載コンピュータと連動させ,自動運転させよう,ということです.
半導体製造装置などに用いられている制震技術を開発していました.
半導体製造などの産業用ロボットでは,部品をとり,それを基板上に置いていくなどの作業がありますが,生産性を上げるためにロボットアームの動くスピードを上げたいという要求があります.一方でスピードを上げるとアーム先端が振動してしまい,それが収まるまで正確な位置決め,部品の設置はできません.振動を抑えるためにはロボットアームと支持台を堅牢に作ればいいのですが,コスト上昇が必至です.
サーボ系の制震は,基本的には固有振動数を抜いたモードで制御すればいいわけですので,ここで開発しているサーボは,ステッピングモータを動かし振動パターンを取得,そしてそれに基づき動作パラメータを自動設定し,制震されたサーボ動作を自動的に実現させていました.
なお,パラメータの設定後のサーボ制御はフィードフォワードであるため,外乱には対応できません.
高速エレベータ.空気抵抗なども考えなくてはいけなくなる.
HTVの誘導.ISSとの相対GPS誘導から,末端はISSの位置をレーザー測距して自律的に接近.
非接触津波観測装置.津波観測は沿岸の潮位計か,沖合のGPS潮位計で測定するが,どれも点観測.沖合のシステムはコスト大.また,沿岸からの可視光観測では,水平線を超えて観測できない.そこで,沿岸からレーダーを照射し,ドップラー効果で潮位と流速を観測しようというもの.面観測.電波は地平線に沿って進むので沿岸から30km程度まで観測可能.定常状態の潮の流れを観測から引くことによって,津波などの異常現象がわかる.
三菱グループ内の別会社は,別会社だと思ったほうがいい.つまり,三菱電機と三菱重工は完全に別.人の出入りもほとんどない.
三菱重工(名誘・名航)ではドクターの採用は5年に1人程度だったが,こちらは研究室だからか多い.所属研究職900人中200人がドクター.
名前
Email (※公開されることはありません)
コメント