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【学科旅行】JAXA 内之浦宇宙空間観測所 見学

事象発生日:2017-03-13

記事公開日:2017-03-13

アクセス数:4093

JAXA内之浦宇宙空間観測所は,旧東京大学宇宙航空研究所だったこともあって,自由な雰囲気でした.室内以外写真撮影OK.学科旅行でやっとまともに撮影できそう.あいにくの雨でしたが....

所長曰く,種子島宇宙センターと比べるとかなり自由.セキュリティ的に問題あるのでは?とよく言われるそうですが,地元の方の厚い協力があってこそなので,オープンにいきたい,だそう.

ただ,種子島宇宙センターと比べるとだいぶ予算も少なく,また今まで衛星打ち上げ後1ヶ月ほどのクリティカル運用はここ内之浦で行っていたが,だんだん筑波宇宙センターでできるように移行しつつあるなど,現状は厳しいものがあるかもしれません.

1.イプシロンロケット

気温が変わると固体燃料の燃焼速度が変わるらしいので,液体燃料ロケットに比べて,軌道投入精度が悪くなります.そこでイプシロンロケットでは,最終段に液体燃料システムをオプションで搭載できるようになっています.

 

Μ-Ⅴは斜め発射でした.レールでガイドされるので,その摩擦や,ランチャからの離脱時にそのたわみが開放されることによる悪影響がありました.

打ち上げ失敗時に地上への被害を最小限にするために斜め発射方式がとられていたのです.

一方,イプシロンロケットでは垂直発射方式となりました.

 

また,Μ-Ⅴは音響も大きかったようです.イプシロンでは煙道で,一部の液体燃料ロケットよりも小さくなるそう.なお,耐火セメント製の煙道は1000万円/mで,お金がなかったのであまり長くできなかったらしいです.

2.追跡アンテナ

34mパラボラアンテナ

アンテナ類は射点から少し離れたところにあります.射点と同じ位置だと,ロケットに対して後ろから見ることになり,ロケットとアンテナの間にガスが存在しています.固体燃料にはアルミニウムが含まれており,その燃え残りがチャフと同じ原理でロケットの追尾を妨害してしまいます.そこでアンテナはロケットを横から見える位置にあるわけです.

3.ロケット(Μ-Ⅴ,イプシロンロケット用)管制センター

映画「はやぶさ」のロケ地にもなった場所です.

Μ-Ⅴまでのロケット自爆スイッチ「コマンド送信空中線」も見させていただきました.まず,普通はロケット内部のタイマーを止める.するとロケット内部のロジックが停止し,ロケットは放物運動をします.

それでも危ない場合,爆破司令を送信することに.

このボタンを押す人は一人で,全情報が彼に集約され,一人で判断しなければなりません.

それだと人間の負担があまりにも大きいというわけで,最近ではコンピュータと人間一人が担当しています.ただし最終的にボタンを押すのは人間です.

また,この担当になるためには.練習試験が何度もあり,3回間違えると適正なしとなるようです.問題例としては,一番うしろに座っているプロジェクトマネージャーが「爆破しろ!」と怒鳴った場合はどうするか? などです.正解は爆破しない.プロジェクトマネージャーは打ち上げが成功したときに握手するくらいの仕事しかなく,打ち上げの成否を判断する情報は持っていないからだそう.(皮肉だ...)

4.観測ロケット管制センター

打ち上げ前非常停止ボタン「エマスト」についての説明などをされました.

打ち上げ後の爆破司令は1人が責任を持って行う一方,打ち上げ前であれば点火をしなければいいだけなので,各パートにエマスト(Emergency Stop)ボタンがあります.

 

風データの履歴表なども拝見しました.通常のロケットの初段はフィードフォワード制御です.つまり風に流されます.

そこで打ち上げの何日も前から風を観測し(観測気球などで),打ち上げ時の天候を予想し,ロケットの打ち上げ制御に反映させます.

風がコロコロ変わるような天候だと,落下地点が警戒区域を外れる恐れがあるので打ち上げられません.

5.ランチャー整備場

ランチャー整備場

観測ロケットのランチャーが2機.

ロケットの径が違うため,ランチャーも複数あります.

スリッパ(ガイドのレール)は上と下2本で同時に外れるようになっています.片方が先に外れるとモーメントが生じ,ロケットの姿勢に影響を及ぼすため,この同時離脱が重要となります.

スリッパのロケット側は,ランチャー上部でひっかかり,せん断でピンを破壊して,打ち上げ直後にロケットから切り離されます.

 

フェアリングは,雨漏りするほど雨に弱いので,この整備場の天井を開けて室内から発射することもあるそうです.

 

新型ランチャー

隣の建屋には,この前失敗したSS-520 4号機に使われた新型ランチャーがありました.こちらは移動式ではなく据え置きで地面に固定されています.使用する時はおそらくカバーを外すのだと思われます.

やはりスリッパの同時離脱は必須の模様.

6.Μ組立室

Μ組立室

Μロケットを組み立てていた場所です.今はイプシロンロケットの組み立てに使用されています.

建物の外壁が凸凹しているのは,隣の射場で爆発が起きた際,その爆風で建物が壊れないようにするためだとか.

また,その凸凹が壁の上側にしかないのは,(イプシロンのときかΜのときか忘れた...)途中で建物の高さを上げる改築をしたから.建物全体をクレーンで持ち上げて,下側に新しい壁を付け加えたそうです.

 

イプシロンロケット フェアリング

写真はイプシロンのフェアリング.強度,展開試験機で実物です.

アルミニウム製で熱的に厳しいところはシリコンゴム+GFRP.Μ-Ⅴは軽量化のためにCFRPでしたが,イプシロンロケットではコスト低減のためにアルミ製です.

7.イプシロン射場(旧Μ-Ⅴ射場)

イプシロン射場

射場にロケットがある状態で震度5以上の地震がくると,ロケットは壊れるそうです(どっかが座屈するって言ってたけど,忘れた.).

耐えるように設計すると,能力落ちるからね.

 

射場からみたΜ組立室.レールでつながっている.
イプシロン射場.左側全体が開く.

Μ組立室とはレールでつながっており,組立室で組み上がったロケットが射場に運ばれ,整備されていきます.整備が終わると側面が開き,ランチャーごと海側の射点へ運ばれます.

8.イプシロンロケット射場煙道

イプシロン射場と煙道
煙道内部

消音のための煙道です.3000度の排気で耐火セメントが溶け,そこに燃え残りの燃料(アルミなど)が付着し再凝固しています.まだ2発しか打ち上げていないのに.....

煙道内部底面(レンズキャップはΦ55mm)
煙道内部側面(レンズキャップはΦ55mm)

 

頂いた(拾った)イプシロン焼き(レンズキャップはΦ55mm)

この,一度溶けて固まったセメントは通称「イプシロ焼き」と呼ぶそう.転がってるのを持ち帰っていいとのことだったのでありがたく頂戴しました.

 

H-ⅡAロケットでは消音としてウォーターカーテンを用いています.しかし固体燃料ロケットの場合,発生する塩化水素と反応,塩酸が生じてしまい,周辺漁場に悪影響を及ぼすということでこのようになりました.

イプシロンロケットの1段目はH-ⅡAのSRB-Aなので,H-ⅡAでも塩酸は発生します.種子島宇宙センターではウォーターカーテンの水はすべて回収し,産業廃棄物として処理しているそうです.

煙道開口部から外側へ.排気が当たった部分が変色しているのがわかる.

9.イプシロン管制室

半地下の建物.火災の際,計器が壊れるとまずいので窒素ガスで充填されます.したがって火災が起きたら即避難しないと窒息死します.

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