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【幾何光学】カメラのレンズ性能の式などの導出

事象発生日:2017-08-15

記事公開日:2017-08-16

アクセス数:5866

今回から数回に分けて,カメラのレンズ性能についてまとめてみようと思う.

当面の目標は,被写界深度の式を導出し,所有レンズの被写界深度を可視化することである.

もちろん,最後は実機で妥当性評価をしたいよね.

1.モチベーション

いい写真が撮りたいわけです.

背景がぼけっぼけの写真とか,きれっきれのパンフォーカスとか.

 

被写界深度の計算式などはネットに転がっているが,それなりに複雑で直感的ではない.(APS-Cよりもフルサイズの方がボケやすいとか.)

やはり自分で導出しないと定量的どころか定性的な理解もできない.

 

そこで,レンズ性能の基本式の導出をまとめ,定性的な理解をした後,所有レンズの被写界深度を可視化し,撮影時の定量的な判断材料とすることにした.

 

(いい写真が撮りたいなら,まず構図や画角,デザイン,色味などを勉強するべきでは...?)

2.基本的な物理量の文字定義

基本的なパラメータは以下の文字で表示する.

\begin{array}{ccll} f & : & \text{焦点距離} & [\mathrm{mm}] \\ F & : & \text{F値} & [] \\ \varDelta T & : & \text{シャッター速度} & [\mathrm{s}] \\ T & : & \text{無次元化シャッター速度} & [] \\ S_{\rm{ISO}} & : & \text{ISO感度 (算術表記)} & [] \\ E & : & \text{光量 (照度,撮像素子上での像の明るさ)} & [] \\ L & : & \text{画像の明るさ (露光,撮影画像上での像の明るさ)} & [] \end{array}

なお,ここでの\(T, E, L\)は独自に定義した量であり,

\begin{align*} T & = \frac{\varDelta T}{1 [\mathrm{s}]} \tag{2-1} \\ E & = C \frac{T}{F^2} \tag{2-2} \\ L & = C \frac{T}{F^2}S_{\rm{ISO}} \tag{2-3} \end{align*}

とする.ただし,\(C\)は適当な比例定数である.

3.F値

定義

有効口径(直径)を\(D\)とすると,無次元数F値\(F\)は,以下のように定義される.

\begin{align*} F = \frac{f}{D} \tag{3-1} \end{align*}

無次元数としての考え方

光学系 [画像出典]

上図のように文字を定義する.

 

物体表面の微小面積\(dS\)が発する光度を\(I \cdot dS\)(一般的に,\(I\)の単位は[cd]だが,ここでは無次元とする)とすると,レンズに入る光束\(\varPhi\)は,物体からレンズを見た立体角\(\omega\)を用いて,

\begin{align*} \varPhi = I \omega & = I \cdot 2 \pi (1- \cos{\theta}) \\ & \approx I \cdot 2 \pi \left(1- \left(1 - \frac{\theta^2}{2}\right)\right) \\ & = I \cdot \pi \theta^2 \\ & \approx I \cdot \pi \left(\frac{D}{2S_1}\right)^2 \tag{3-2} \end{align*}

となるので,光量\(E\)は,

\begin{align*} E \propto \varPhi \approx I \cdot \pi \left(\frac{D}{2S_1}\right)^2 \propto \frac{\pi D^2}{4} \tag{3-3} \end{align*}

とレンズの開口面積に比例する.

 

さらに,撮像素子上での光量\(E\)は像の大きさにも依存するので,次に倍率を焦点距離で表す.

レンズ公式は,

\begin{align*} \frac{1}{S_1} + \frac{1}{S_2} = \frac{1}{f} \tag{3-4} \end{align*}

であるので,一般的(マクロレンズなどを除いて)に\(S_1 \gg f\)であることを考慮に入れると,倍率\(S_2 / S_1\)は,

\begin{align*} \frac{S_2}{S_1} = \frac{f}{S_1 - f} \approx \frac{f}{S_1} \tag{3-5} \end{align*}

となる.

すると,物体の微小面積\(dS\)の撮像素子上での面積は,

\begin{align*} \left(\frac{S_2}{S_1}\right)^2 dS \approx \left(\frac{f}{S_1}\right)^2 dS \tag{3-6} \end{align*}

となるので,撮像素子上での照度(単位面積単位露光時間あたりの光量)\(E/T\)は,

\begin{align*} \frac{E}{T} = \frac{\varPhi \cdot dS}{\left(\frac{f}{S_1}\right)^2 dS} \approx \frac{\pi I}{4} \cdot \left( \frac{D}{f} \right)^2 \propto \frac{1}{F^2} \tag{3-7} \end{align*}

とF値の二乗の逆数に比例する.

4.露出

露光\(L\)は,照度\(E/T\)にシャッター速度\(T\)とISO感度\(S_{\rm{ISO}}\)を乗じればいいいので,

\begin{align*} L \approx \frac{\pi I}{4} \cdot \left( \frac{D}{f} \right)^2 TS_{\rm{ISO}} = C \frac{T}{F^2} S_{\rm{ISO}} \tag{4-1} \end{align*}

となる.

したがって,露光を1段上げる(露光を2倍にする)には,F値を\(1/\sqrt{2}\)倍,シャッター速度を\(2\)倍,ISO感度を\(2\)倍のいずれかの操作をすればいいことがわかる.

5.まとめ

今回導出した式などをまとめておく.

\begin{gather*} \frac{E}{T} = \frac{\varPhi \cdot dS}{\left(\frac{f}{S_1}\right)^2 dS} \approx \frac{\pi I}{4} \cdot \left( \frac{D}{f} \right)^2 \propto \frac{1}{F^2} \tag{3-7} \\ L \approx \frac{\pi I}{4} \cdot \left( \frac{D}{f} \right)^2 TS_{\rm{ISO}} = C \frac{T}{F^2} S_{\rm{ISO}} \tag{4-1} \\ \end{gather*}

6.つづき

ページに数式が増えてくると,MathJaxのレンダリングが重くなってくる.

というわけで,続き(被写界深度の導出など)は「」の「」にまとめる.

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